誕生日とは何の関係もない『都々逸』置き場です。

都々逸とは…都々逸坊扇歌が完成させた七・七・七・五調の定型詩。

有名どころだと『立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花』や『三千世界の鴉を殺し主と朝寝がしてみたい』など。

 

土沖っぽい都々逸を集めました。

どれも作者が亡くなってから70年以上経っており、著作権を失効しているので創作のネタにいかがでしょうか。

ぜひお題としてお使いください。

お題として使用する際はこちらをお読みください


あ行

愛の一字じゃ 足りないだろう 俺とお前の 関係は

 

逢えば恨みの 言葉も鈍る 惚れた因果か この弱さ

 

諦めましたよ どう諦めた 諦めきれぬと 諦めた

 

あなたの私と 決めとくものを 私のあなたじゃ ないあなた

 

勢いだけで 繋いだ身体 手と手も繋がず 始まる恋

 

意識せずには いられないんだ たとえ好きでも 嫌いでも

 

痛いの痛いの ほんとに痛い あなたのおそばに いたいのよ

 

いやなお方の 親切よりも 好いたお方の 無理がよい

 

嫌よ嫌よも 好きのうちだと お前が言うなよ そうだけど

 

浮名立ちゃ それも困るが 世間の人に 知らせないのも 惜しい仲

 

岡惚れしたのは 私が先よ 手出ししたのは 主が先

 

お前死んでも 寺へはやれぬ 焼いて粉にして 酒で飲む

 

重いからだを 身にひきうけて 抜くに抜かれぬ 腕枕

 

重くなるとも 持つ手は二人 かさに降れ降れ 夜の雪

 

 

か行

君は可愛や 日頃は猛る 虎がころりと 猫になる

 

君は野に咲く あざみの花よ 見ればやさしや 寄れば刺す

 

切れて見やがれ ただおくものか 藁の人形に 五寸釘

 

下らぬ冗談 間に受けたのに 本気の言葉は 流す人

 

口でけなして 心で褒めて 人目しのんで 見る写真

 

戀という字を 分析すれば 糸し糸しと 言う心

 

恋に堕ちたか 堕ちたは罪か いっそこの手で 手折ろうか

 

恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす

 

この袖で ぶってあげたい もし届くなら 今宵のふたりにゃ 邪魔な月

 

拒む気はない 一言馬鹿と 肩へ廻した 手を叱る

 

小指切らせて まだ間がないに 手まで切れとは 情けない

 

今宵限りを 重ねたふたり 今宵限りが 今宵まで

 

これほど惚れたる 素振りをするに あんな悟りの 悪い人

 

 

さ行

寒くなったと 言い訳ひとつ 枕抱えて 背を合わす

 

拗ねて片寄る 布団のはずれ 惚れた方から 機嫌とる

 

背伸びしたこと たしなめられて 大人の蜜の 味を知る

 

 

た行

ちらりちらりと 降る雪さえも 積もり積もりて 深くなる

 

月より冷たく 見下してくれ いきぐるしいと笑うほど

 

包み隠して しまったはずが 溢れこぼれて 頬伝う

 

つねりゃ紫 喰いつきゃ紅よ 色で固めた この体

 

強がりの あんたが一言 小っちゃな声で おまえが好きだと 言えた晩

 

ツンと向く顔 のぞく赤耳 素直じゃないから キスをする

 

どうせ互いの 身は錆び刀 切るに切られぬ くされ縁

 

遠くはなれて 逢いたいときは 月が鏡に なればよい

 

届かぬ月より 掴めぬ星より あんたの方が まだ遠い

 

 

な行

泣くと知りつつ お前を抱いた 酒のせいだと 言い聞かせ

 

泣くもじれるも ふさぐもお前 機嫌なおすも またおまえ

 

鳴けど嘆けど 届かぬ声を 無理に殺して忍び泣く

 

似た者同士 背を向けあって 同じ重さで 寄りかかる

 

ぬしと私は 玉子の仲よ わたしゃ白身で きみを抱く

 

 

は行

バッドエンドも 貴方とならと 月を海まで 連れていく

 

春はおぼろに 月かげ淡く 恋にせりふの 要らぬ宵

 

触れる唇 合わさる吐息 離れる目線は 照れ隠し

 

ほととぎす いきな声して 人足を止めて 手をだしゃお前は 逃げるだろう

 

惚れさせ上手な あなたのくせに 諦めさせるの 下手な方

 

惚れた証拠は お前の癖が いつか私の 癖になる

 

惚れて惚れられ なお惚れ増して これより惚れよが あるものか

 

惚れて悪けりゃ 見せずにおくれ ぬしのやさしい 心意気

 

惚れられようとは 過ぎたる願い きらわれまいと この苦労

 

 

ま行

巻き煙草 体まかせて 口まで吸わせ 灰になるまで 主のそば

 

待って焦がれた 二人の夜に 俺らを見てるは 月ばかり

 

真昼の畳で 重なる身体 声を隠した 蝉時雨

 

水の月 手にはとれぬと 諦めながら 濡れてみたさの 恋の欲

 

もしもあなたが 泣いてるのなら 今すぐ優しく 殺すのに

 

望月の 花の下にて 肩寄せ合えば 散るは桜と ならぬ恋

 

 

や行

夢に見るよじゃ 惚れよが薄い 真に惚れれば 眠られぬ

 

よしや今宵は 雲らば曇れ とても涙で 見る月を

 

よせばいいのに 深読みしすぎる 惚れた弱みの 浅ましさ

 

弱虫がたったひとこと 小っちゃな声で 捨てちゃいやよと 言えた晩